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割増賃金や休業手当、解雇予告手当などを算出する際の端数処理の方法について、実際の計算例を示して教えてください。
特に解雇予告手当を計算する際の、小数点以下の端数については、労基法の条文に規定が見当たりません。

割増賃金の端数処理については、時間外労働時間数及び割増賃金額の取扱いに注意してください。

休業手当、解雇予告手当の端数処理については、基礎となる平均賃金は銭未満の端数は切り捨て、実際の休業手当、解雇予告手当の計算については、特約の有無によって扱いが異なります。

解説

1.割増賃金の端数処理

割増賃金については、その計算過程において、時間外労働時間数と割増賃金額の2つに端数処理が生じる場合があります。

行政通達では、賃金の計算において生じる労働時間や賃金額の端数の取扱について、「次の方法は常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、法24条及び法37条違反としては取り扱わない。」としています(昭和63.3.14 基発150)。

まず、労働時間については、「1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。」については、労基法違反として取り扱わないこととしています。

ここで注意しておくべき点は、あくまでも「1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計」に1時間未満の端数がある場合であり、日々の時間外労働、休日労働、深夜業の時間について、端数を切り捨てることは許されないということです。

次に割増賃金の端数処理について説明します。

割増賃金計算における端数処理に関して、上記行政通達では、

①1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。

②1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、①と同様に処理すること。

については労基法違反として取り扱わないこととしています。

また1か月の賃金支払額における端数処理に関しても、

①1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額。以下同じ。)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。

②1か月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。

については労基法違反として取り扱わないこととしています。

なお、1か月の賃金支払額における端数処理については、行政通達の中で「これらの方法を取る場合には、就業規則の定めに基づき行なうように指導されたい。」とされていることから、このような処理を行なう場合には、就業規則や賃金規程にその旨を明記しておく必要があります。

2.平均賃金の端数処理

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において支払う休業手当(労基法26条)、労働者を解雇しようとする場合に支払う解雇予告手当(労基法20条)の計算においては、いずれも平均賃金(労基法12条)を基に計算することになります。

平均賃金とは、原則として、算定事由発生日以前3箇月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいいます(但し、最低保障額や特殊な場合の計算については、本稿では割愛します)。

行政通達においては、平均賃金の算定にあたり、銭位未満の端数が生じたときはこれを切り捨ててもよいとされています(昭和22.11.5 基発232)。

【平均賃金の計算】

①前3ヶ月に支払われた賃金の総額:950,000円

②前3ヶ月の総日数:91日

③平均賃金:950,000円÷91日=10,439.56043≒10,439円56銭

3.休業手当の端数処理

休業手当については、労基法26条において、「平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とされています。

上記で計算した平均賃金を基に、休業を7日させた場合の休業手当の端数処理を計算してみます。

10,439円56銭×7日×60/100=43,846.152円

ここでの端数処理については、休業手当は賃金と解されているため(昭和25.4.6 基収207、昭和63.3.14 基発150)、前述の割増賃金額の端数処理と同様の取扱いをする必要があります。

4.解雇予告手当の端数処理

行政通達では、解雇予告手当は賃金ではなく、ただその支払については、通貨で直接支払うように取り計らうべきものとされています(昭和23.8.18 基収2520)。

解雇予告手当の端数処理については、直接的に示されたものはないことから、賃金に準じて取り扱うことが一般的です。

したがって、就業規則等において、端数処理に関する規定が明記されていれば、それに基づいて計算を行うことになります。

仮に就業規則等において、特段の定めがない場合には、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第3条の規定に基づき、「1円未満の端数につき50銭未満は切り捨て、50銭以上は1円に切り上げて支払う」ことになります。

5.まとめ

これまで述べてきた事項を箇条書きにまとめると下記のとおりになります。

平均賃金の端数処理
平均賃金:950,000円÷91日=10,439.56043≒10,439円56銭
平均賃金の算定にあたり、銭位未満の端数が生じたときはこれを切り捨ててもよい(昭和22.11.5 基発232)。
就業規則等における特約の有無 端数の取扱い 休業手当 解雇予告手当
10,439円56銭×7日×60/100=43,846円15銭 10,439円56銭×30日=313,186円80銭
あり 100円未満の端数を四捨五入する 43,800円 313,200円
なし 1円未満の端数を四捨五入する 43,846円 313,187円

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